tohokuaikiのチラシの裏

技術的ネタとか。

立ち飲みヤキトン屋にみる勝てるソーシャルゲームの作り方

東中野の駅前に丸小っていう立ち飲みのヤキトン屋があって、たまに仕事帰りに寄るのですがこの店の満足感が半端ないんです。なんか、店出るときには「いやー、飲んだ。食ったー」って気になって明日への活力が湧くんですね。


なんなんだろう・・・・と考察をすると、意外にもソーシャルゲームの要素に似てることに気がつきました。

別にわざわざ遠くから来る程ではないが、近くにあれば寄りたくなる店

わざわざ品川とか川崎から来る店ではないです。断じて。それやるんだったら、川崎にも品川にも似た店はいっぱいあります。たぶん。。。だけど、各駅にあるかっていうとそうではない。意外と探すのは難しい。そういう意味では東中野駅を使う人はラッキー。

ケータイのソーシャルゲームもそうではないですか?

SNSにくっついて『あれば』たまたまやるけど、別にそれを目的に・・・・ってほどではない」

適度な参加障壁

参加障壁ってのは、それを始めるまでの適度なスクリーニング。ゾーニングといってもいいかも。

とにかく、この丸小はいきなりは入りづらい。とりあえず、いつやってるかわからない。18時頃から始まるんだけど、本当に18時にはじまるかというとそうでもなく、19時頃いくともう満席。満席といっても立ち飲みなので押しのければ入れるんだけど、それはそれなりのテクニックが必要で。

じゃあってんで、22時頃に行くともう終わってたりする。

自分はいつも「お、今日はまだやってるな。入れるかな?入れた。ラッキー」って感じで入る。なかなか参加できない感じ。これも、SNSに入って、人気ゲームだと募集枠に滑り込まないといけない感がソーシャルゲームよく似てると思う。

細かな成長ポイントがいっぱいある

丸小では何かをなす度に、新しいステージに立つ自分を確認できる。さっきの参加障壁にも通じるけど、ここに入るだけでもかなりレベルが上がった感じがする。

成長ポイント1:立場の変化を身につける

なにしろ、周りは「清く正しいニホンのサラリーマン」といったお客ばかり。崩したネクタイ&スーツあるいは、目の前のパチンコ屋から出てきましたルックが正装。お前ら絶対そのままビックコミックオリジナルのエキストラになれるで!という客ばかり。こっちに釣りバカ日誌、あっちに山口六平太って感じ。

そこへ「はい、ちょっとゴメンね、通りますよ」って奥の席*1まで行けたときの

「あぁ、自分も正しいニホンのオヤジになったんだ。かあさん、おれ、社会ですり減ってるよ!!!」

という実感。学生時代には味わえない成長ポイントです。

成長ポイント2:周囲にいちいち気を取られない

禁煙とか分煙とか、時代の流れはまるで無視です。タバコの灰皿は床。白いタオルで台を拭き、赤いタオルで手についたタレを拭う。当然周りの数人と共用。隣は「さっきまでチン○掻いてました」って顔つきのおっさんですが気にしないことにします。

丸小でそんなこというのは野暮の極みです。タバコがイヤ?クチャラーが気になる?そんなことは広い心で受け止めていっしょに豚ホルモンをくちゃくちゃやれば良いのです。そして、また人間が一回りおおきくなる成長ポイントを迎えます。

成長ポイント3:一人で飲むのがデフォルト

清く正しいニホンのサラリーマンとして、同僚と数人でくるのもいいでしょう。ただ、東中野というベッドタウンな上に混んでる狭い店。なかなか都合が付かないことも多い。そうなると、一人で来て、さっと20分程飲んで食べて帰るのがデフォルトになります。

2〜3回繰り返すと、

「あれ?オレは何で一人で丸小にきてるんだ?」

という疑問すら抱かなくなります。


何故一人で来るのか?それが充実してるからだ。そこに気付く自分がまた成長してるのです。


このように、人として細かく成長を感じられるポイント。まさにソーシャルゲームでの重要な嵌めポイントです。

注文するにもタイミングと気配が必要

ファミレスじゃないんです。店員はマスター(おやっさん)しかいません。9時まではヘルプのおばちゃんもいるけど、それだって二人だけ。そこに店内20名(最大値)ほどの相手をするんだから、これは聖徳太子でない限りムリ。

そこで、隣の客の注文と合わせたり、お皿を下げにきたときにすかさず注文。

どうです?他のユーザーとの連携を意識させるこの作り。まさに勝てるソーシャルゲームに相違ない。

だけど、決して一見さんお断りの雰囲気じゃないマスター

丸小の素晴らしいのはマスターの気配りです。ちょっと入りにくそうにしてると、他のお客に「はい、ちょっと通してあげてねー」って声をかけ、注文時にタレか塩か言いそびれると「タンは塩で良いねー」とフォローをしてくれ、ちょっと混んでヤキトンが待つことになると「ごめんねー。おまたせー」って言って串を置く。

その全てがサイコウのホスピタリティとユーザーエクスペリエンスを提供してくれる。

そう。繁盛店で、ひとりで目が回る程忙しいのに*2、決しておごるコト無く対応してくれる。そう、まさによく出来たソーシャルゲームチュートリアルのように、這えば立て立てば歩めの親心なのです。


来店の度に確実に経験値を上げてレベルアップ

このように、「それほど難しくはないけど、ちょっと障壁のある」というレベルの入店/注文/実食/会計を済ませて店を出ると、そこには何かしらやり切った満足感・充実感があります。


この充実感は、小さいながらも幾多の困難に立ち向かい、そしてウマいヤキトンを食べられた自分への賞賛。自己肯定。誰と比較することもない、過去の自分との成長を踏みしめる味わいです。

このユーザーエクスペリエンスを体験したいゲームプロデューサーは今すぐあなたの駅前の立ち飲みヤキトン屋に足を運びましょう。できるだけ、狭くて汚くて繁盛している入りにくい店こそ学ぶことが多いですよ。

*1:椅子無いけど

*2:実際よく注文をさばききれなくて「う〜〜」ってうなってる