明治神宮に参拝するのに使われることで有名な、小田急小田原線の参宮橋駅っていうのがある。
当駅の近くに線路に架かる跨線橋「参宮橋」があるため。
って書いてある。
が、これは変だ。それを真っ当に受けると、そもそも線路が先にあって後で橋ができたことになる。少なくとも、「小田急線ができる前に参宮橋はなければ、駅名の由来になりえない」のは確かである。
とりあえず、可能性を考えてみる
ただ、「小田急小田原線の開通後、参宮橋駅があたらしくできた」っていうならそれは矛盾しない。
それは、こんな感じ。
しかし、参宮橋駅は小田急小田原線の開業当初から存在するから、この可能性は無い。
もう一つの可能性は、「すでに小田原線の用地を買収してて、線路の敷設工事中だったため、その線路をまたぐ橋を作って参宮橋とした」というのがある。
しかし、実際の時系列をくわしくみると、
- 1920年(大正9年)11月1日 明治神宮の鎮座祭が行われた。
- 1923年(大正12年)5月1日 - 小田原急行鉄道株式会社創立
- 1927年(昭和2年)4月1日 - 参宮橋駅開業。(小田急小田原線の開業)
とある。
鎮座祭が何かって良くわからないんだけど、これを見ると、上記の可能性を満たすには参宮橋は1923年から1927年の間に建立されてなければならず、その間線路が敷きっぱなし(あるいは工事しっぱなし)ということになる。
その可能性は低い。無いわけではないが、当時の明治天皇への人々の意識を考慮すれば、そんな急造な橋を「参宮橋」っていう明治天皇を祭る神宮への橋として、名づけられるとは思えない。
参宮橋自体は明治神宮や、小田急線より以前からあった
やはり、一番考えやすいのは、参宮橋自身が昔からあったということだろう。その後、明治神宮ができ、橋の名前が変わった・・・・という。
しかし、今の参宮橋を見てみると、橋の下は線路しかくぐっていない。
(写真は、参宮橋駅 -日本道観 東京道学院 公式情報BLOGから)
ただ、今はみじんもその印象を見せないが、この代々木辺りは細かな川が縦横に走る湿地帯だった。おそらく、その川を越えるための橋があったんじゃないかと思った。
その解答はここにあった。
加瀬竜哉.com : no river, no lifeは、渋谷の今は無き暗渠などの古い川について調べたことが載っているページだが、そこに今回の疑問の回答となるそのものズバリの絵が
ぎりぎり参宮橋の方が切れているけど、川があったのは間違いないだろう。
更に調べると、東京都建設局のページ内にもそのヒントを求められた。多分、河骨川の上流部分になるんだろう。
むかし、参宮橋は今は無き河骨川(たぶん)をまたぐ、名もない橋だったのかもしれない。
ところが、ある日明治大帝を祭る神宮ができ、その橋は「参宮橋」と呼ばれるようになったんだろう。
しかし、もともとまたいでいた河骨川は、東京の発展によってつぶされて(あるいは、一部は暗渠化されて)しまい、いつの間にか参宮橋の下には線路が走り、その駅名の由来にもなった。うーん、橋に歴史あり。